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英国紳士に学ぶ。週末に取り入れたい「心を整える靴磨き」

イギリスのウィンザー近郊に広がるイートン校の校舎。
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「靴磨きって、身だしなみの一部でしょ?」そう思っていたが、歴代首相や王室メンバーを輩出した英国の名門校・イートン校では、靴磨きは“礼節を学ぶ儀式”として位置づけられている。今回、その文化を深掘りすべく、“イートン・シャイン”の思想に触れてみた。

1928 年、イートン校とハロー校の男子生徒の一団。

週に一度の“ポリッシュアワー”。沈黙のなかで磨かれるのは靴だけじゃない

最も驚いたのは、イートン校の寄宿生に課される「ポリッシュアワー」という時間。週に一度、生徒は会話を禁じられ、黙々と靴を磨く。聞こえるのは、ブラシが革を撫でる音だけ。沈黙の時間の中で、生徒たちは自分と向き合う。「靴を整えること=自分自身を整えること」という英国式の価値観が、ここに凝縮されている。

新入生には「Eton housekeeping rules」という冊子が配られ、「靴は自分で磨くこと」と明記されている。週に一度の靴チェックでは磨き残しが減点対象。上級生が下級生に磨き方を教えるという“紳士の継承文化”も印象的だ。

イートン式“イートン・シャイン”の手順

STEP
埃落とし — “埃は怠惰の象徴”

馬毛ブラシで優しく、一定のリズムで。

STEP
クリーム入れ

少量のクリームを円を描くように。10分休ませることで革が深く息をする。

STEP
ブラッシング

再び馬毛ブラシで磨き、ツヤを引き出す。

STEP
ワックスで控えめな光沢を

ワックスと水を一滴だけ使い、つま先と踵にほんのりと輝きをのせる。

そしてここで、個人的に“ガツン”と来た一言がある。「光らせすぎは虚栄とされる。紳士の靴は控えめに輝くものだ」正直なところ、これまで僕は“鏡面仕上げこそ至高”と信じていた。顔がくっきり映るほどのミラーレベルに仕上がると、達成感すらあった。
しかし、イートン校の文脈では、それは“やりすぎの自己主張”=虚栄。むしろ、“節度ある、自然な光沢”こそが紳士の美学だという。英国式の価値観に触れたとき、磨き方だけでなく“靴に向かう心の姿勢”そのものを見直すきっかけになった。

静寂の中で、自分の“ノイズ”を削る

今回感じたのは、靴磨きの技術以上に、その“時間の質”にあった。ブラシの音だけが響く空間で、思考がゆるやかに整う。忙しさに流される僕らにこそ、こうした“内側を整える習慣”が必要なのかもしれない。

僕らの日常に取り入れる“イートン・シャイン”

イートン式の靴磨きを完璧に真似する必要はない。けれど、そこから学べるものは驚くほど多い。

  • 靴を磨くことで、自分の生活の軸を整える
  • 物を丁寧に扱うことで、所作が変わる
  • “磨いた靴=相手への敬意”という英国紳士の精神を身につける

週末の5分。お気に入りの革靴にクリームをのせ、ゆっくりとブラシを走らせる。それは、靴を整える行為であると同時に、心の輪郭を整える小さな儀式だ。“イートン・シャイン”。英国紳士が受け継ぐ習慣は、僕らにも確かなヒントをくれる。

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