カチョッポリをペコラ銀座で仕立てる
高度なテクニックを必要とするコットンスーツ

「作る立場からいうと、コットンやリネンを使ってスーツという形にするには、とても高度なテクニックが必要なのです」と語るのはオーナーの佐藤英明さん。アイロン操作しやすいウールにくらべコットンはほとんどそれができないため、職人の技術力の差が出やすいそうだ。最近よく既製品のコットンスーツやジャケットを見かけるが、ほとんどいせ込みもなく平面的に仕上がっている。たとえファクトリー生産でも厚地のウールならスーツを立体的に仕立てることができるが、コットンスーツを魅力的に作れないということだ。
ところがペコラ銀座の場合は職人の技術力をフルに使い、コットンのもつ素材感と着る人の存在感を驚くほど浮き彫りにしてしまう。その作りを見てみると、ジャケットの見返しは大見返しである。一見するとアンコンジャケットのようだが、とても手間のかかる仕立て方法で夏物に採用することが多い。さらに中に入れている芯地はイタリアから取り寄せた白い本バス毛芯で、ロール部分は手で八刺しを行っている。シアサッカーやリネンの場合、透けてしまうことがあるため、芯地も白色にこだわるのである。また、ビスポークならではと思わせるのが、生地を裁断する前に一度水に浸して自然乾燥させている点である。地のしをアイロン操作でできないため、前もって生地を縮ませるのである。
「コットンスーツであっても、安っぽく見せないように、土台となる芯地作りにもこだわり、立体的なシルエットを作るようにしています。ようやく日本でもコットンスーツをオーダーされる方が増えてきましたが、イタリアでは昔からバカンス時に着用されるハイソサエティな方が多いです。手間を惜しまず仕立てたコットンスーツにはクラス感が漂うと思います」

夏物に多い大見返しを採用。たとえカジュアル色の強いシアサッカーであっても、しっかり芯地を入れて立体的に仕立てられている。美しいシルエットだけでなく、ワンシーズンで駄目になるモノとは根本的に違う

細腹(サイバラ)をとらずに、フロントダーツを斜めにとっている。これによりウエストのシェイプを出して、スーツを立体的に見せている。はっきりとしたストライプ柄なのでダーツを採用しても違和感がない。

軽量&扱いやすいカチョッポリのシアサッカー

今回使用した服地はカチョッポリのシアサッカー。コットン33%×ポリエステル67%という混紡率にすることで、軽量化と取り扱いやすさを実現している。ポリエステルを混紡することでシワになりにくく縮みも少ない。さらに汗や紫外線にも強く耐久性が増すといわれている。夏用服地に関してはコットン100%という天然素材にこだわるべきではないし、とくに高温多湿の日本で最適な素材である。また、他社の服地に比べてカラーバリエーションが豊富で、なかにはブラックウオッチといったプレッピーな柄もある。デザイン性と機能性をあわせもつ稀有なマーチャントだ。

春夏の定番服地であるシアサッカーを使ったスーツ。昨年あたりから既製品でも多く見かけるが、このようにグラマラスな仕立てになることは絶対にない。ビスポークならでのテクニックを感じさせる。

内ポケットは少し浅めに作られている。というのはモノを入れたときに正面から見ると胸あたりのシルエットが崩れてしまうためだ。解決策として上部分にポケットを延長しているので長いモノを入れることもできる。

大見返し仕立てのため内ポケットが写真のように袋状の独立した作りになっている。モノを入れてもそれほどシルエットに影響しない仕様でもある。また、表側がシアサッカー地で、裏側が白色(写真)という配慮も。

オーナーであり、サルト(仕立て職人)である佐藤英明氏。父親がテーラーということもあり早くからサルトの道を歩む。1990年から約5年間、ミラノの老舗「マリオ・ペコラ」で修行し、2000年から現在の店舗で開始。佐藤氏の原点はやはりイタリア。ヨーロッパの本質的なスーツの美しさや良さ忘れないように、イタリア的美意識と技術をスーツ作りに反映している。

フルハンドライン「ペコラギンザ」シングルスーツ28万円〜。納期約2ヶ月。セカンドライン「プリマプローヴァ」シングルスーツ18万円〜。納期約1.5ヶ月。

東京都中央区銀座4-3-2清水ビル3F
TEL.03-3535-6465
営業時間:11:00〜19:00 店休日:日・祝

カチョッポリに関するお問合せ:アルヴェスティ ジャパン TEL.03-5412-1500

文:倉野 路凡 写真:猪又 直之