パラブーツ100周年誕生と、その偉大なる軌跡

創業者レミー・アレクシス・リチャード氏

靴の工業生産が発展しつつあった20世紀初め頃のことです。日々、靴用の革の裁断作業に勤しんでいた青年レミー・アレクシス・リチャード氏(1878〜1945年)は一念発起し、独立を決意をしました。そしてフランス中東部の小さな工業都市イゾーにオーダー靴門の工房を開設。今からちょうど100年前の、この1908年がパラブーツの事始めとなりました。
2年後、資産家ポンヴェール家の娘と結婚したのを機に、リチャード氏は同家の支援を得てリシャールポンヴェール社を創立。 新聞広告などを打つなどして企業経営者や軍関係者、山岳地の労働者らから受注した靴を製作しながら、事業を発展させていったのです。 1926年、渡米していたリチャード氏はそこでラバーソールのワークブーツと出会い、衝撃を受けました。 というのも、当時、ヨーロッパではそうしたゴム底の靴はほとんど存在していなかったからです。 そして、その底材の原料となる天然ラテックスがアマゾン産であり、ブラジルのパラ港から海外に出荷されていることを突き止めました。 翌年、米国からゴム底製造用の機械を導入し、パラ港からラテックスを輸入した同社、さっそくラバーソールシューズの生産を開始。 そして、それらを展開するブランドの名をパラ港にちなんだ「パラブーツ」としたのです。

フランス、イゾーにあるパラブーツのメインファクトリー。オリジナルの底材はここで生産されている。

こうした経緯から、リシャールポンヴェール社は現在でも自社でラバーソールを製造。世界中にあまたある革靴メーカーのなかで、ラバーソールを完全自社生産しているのは、実は同社だけなのです。しかもパラブーツのラバーソールは、いずれもクッション性や屈曲性に富み、しかし摩耗しにくいう特性を持つのみならず、天然素材ゆえに非常にエコロジカルな底材でもあるのです。加えて、ほとんどの製品にノルヴェイジャンウェルト製法、またはグッドイヤーウェルト製法を採用しているので、たとえ靴底が摩耗しても、何度でもオールソールの張り替えが可能です。またアッパーにも良質な素材が使われ、デザインにも普遍性があるため、末長く愛用することができるわけです。早い話、パラブーツの靴は年齢を問わず、流行に流されず、さまざまなシーンや着こなしに無理なくマッチする、真の"一生靴"なのです。

取材・文:山田 純貴 人物写真:新城 孝