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gentille

2014年7月19日
ジャンティーユ

フレンチスタイルの新たな伝説が不動前から始まる!

東京メトロ南北線の乗り入れで環境が一変した東急目黒線。以前の名称=目蒲線の方がピンと来る読者の方もまだ多いのではないでしょうか。その起点・目黒駅のすぐ隣にありながら、かつてのこの沿線らしいのんびりした雰囲気が残る不動前駅のすぐ近くにあるのが、今回ご紹介する靴のオーダーと修理のお店「gentille(ジャンティーユ)」です。

 

駅から近い路面店は、実は非常に稀

 

お店を主宰する遠藤 光志(えんどう こうじ)さんは1979年生まれ仙台の出身で、上京後修理店に勤務することから靴の魅力に目覚めたそうです。

 

手縫い系の靴学校に入り訓練を積むうちにフランスのドレスシューズの美しさに惹かれ、卒業を前に渡仏。現地で当時頭角を現しその後某有名靴ブランドのビスポーク部門に招かれた靴職人Anthony Delos(アントニー・デロス)氏の下で主に底付けを学び、帰国後の2012年の5月にこのお店をオープンさせました。

 

不動前を選んだのは、上京以来住み慣れたこの街にとても愛着があったからだとか。駅から30秒もかからない場所にあり、しかも東京のビスポークシューメゾンでは非常に稀な「路面店」です。初めての方や地方の方でも迷うことなく訪問できます。

 

原則仮縫いは2回以上のフルビスポーク

 

さて、ジャンティーユのオーダーシューズですが、遠藤さんの誕生年に因んだ“79 Soixante-dix-neuf(ソワサントディズヌフ)”をブランド名とする、仮縫い付きのフルビスポークのみでの展開です。

 

仮縫いは少なくても2回、場合によっては3回行われ、それぞれアッパーの要調整の箇所を切り開き足の入り具合を確認してゆく、修業先と同様の緻密なメソッドを採用しています。

 

2回目の仮縫いでは外で履けるような状態にまで仕上げ、顧客に実際に数日履いてもらった上で、その結果を最終製品に反映させるのも特徴。足の状況や仕様などで異なりますが、発注から完成までの納期は今のところ半年から9カ月とのことです。

 

見映えと履き心地を左右するすくい縫い

 

底付けは出し縫い(ウェルトとアウトソールとを縫い合わせる工程)まで手縫いで行うフルハンドソーン・ウェルテッドと、それをミシンで行う九分仕立てハンドソーン・ウェルテッドがメインです。追加料金がかかりますが、すくい縫いを側面に出させたノルベジアン縫いにも対応します。

 

遠藤さんによると、作成で最も気をつかう工程がすくい縫い(アッパー・ライニング・インソールとウェルトを縫い合わせる工程)だそうで、長期間靴を履き続けるとここの仕上がりの良し悪しが、靴の表情だけでなく履き心地にも差をもたらすからだとか。確かに彼の作品を見ると、アッパーの底がウェルトへと綺麗に連なっていて、仕上がりの完璧さには驚かされます。

 

プレーンなのに表情が豊か

 

デザインの基本はフレンチスタイルですが、その割にアウトソールのウェストの絞りがしっかり入るのはむしろ師匠譲りの様式美と言えるでしょう。もちろん若干のアレンジにも対応可能です。

 

顧客に特に人気があるのは内羽根式のプレーントウとのことで、店内に飾られているサンプルの靴を見ると、確かに「プレーン」なのに表情に立体感があって、しかもそれがこれ見よがしではなく極めて自然に見えるので、この評判には納得です!

 

車のシェイプを意識しつつ造形しているだけあり、その優美な曲面はなんとなく昔のシトロエンに似ている気も…… ちなみに遠藤さん自身がお好きなのは、鳩目周辺を竪琴型にくり抜くアデレイドの意匠を用いたものだそうですよ。

 

決して履き手より目立たない優しさを備えた靴

 

最後に、人気のアッパーはやはりフレンチカーフのスムースレザーで、色はミディアムブラウンとダークブラウンが圧倒的。黒い靴のオーダーは意外と少ないそうで、将来的にはパティーヌのオプションも検討したいとのことです。

 

いずれにしても細部に手抜きのまったくないとても美しい靴なのですが、その種の靴にありがちな、履き手より靴が目立ってしまう主客転倒の悲劇を決して起こさないバランス感が、このお店のビスポークシューズの最大の魅力でしょう。これは創り手の遠藤さんの優しい人柄が、自然に反映されているだと思います。

 

白がベースのジャンティーユは、路面に面した大きなガラスによる明るい内装で、そこはフランスの洒落たカフェのよう。リラックスしてオーダーに臨めそうです。イギリスともイタリアとも異なるフランス靴特有のエスプリを感じたい方は、ジャンティーユでのオーダーは必ず満足のいく選択になるはずです。

ジャンティーユ

遠藤さんイチオシのアデレイド仕様のクオーターブローグ。アデレイドの微妙な曲線が靴に軽快なリズムを与える。フルハンドソーン仕様・初回時21万円(税抜)

 

ジャンティーユ

これが似合う大人になりたい! と思わせてくれるモカシン縫いのクロス模様が独特なローファー。なおスリッポン系は2足目以降から対応。レースアップの靴とは木型を変更します。フルハンドソーン仕様・初回時21万1000円(税抜)

 

ジャンティーユ

エッジの膨らませ方に微妙な抑揚を付け、美しさと履き心地の両立を図ったフルブローグ。英国靴とは異なり、とても華やかな印象。フルハンドソーン仕様・初回時21万円(税抜)

 

ジャンティーユ

プレーンであるがゆえに豊かな抑揚が表情に出たインサイドエラスティック。トウシェイプの独特な造形は師匠譲り。フルハンドソーン仕様・初回時21万6000円(税抜)

 

ジャンティーユ

師匠「アントニー」の名を付けた内羽根式プレーントウ。前半分の底付けはいわゆるノルベジアンだが縫い糸の太さが強調されず、つま先の落ち方も見事。フルハンドソーン仕様・初回時22万4000円(税抜)

 

ジャンティーユ

お店は東急目黒線 不動前駅より10秒。

 

ジャンティーユ

 

ジャンティーユ

お店を主宰する靴職人の遠藤光志さん。

 
  • gentille & 79(ジャンティーユ&ソワサントディズヌフ)
  • 〒141-0031 東京都品川区西五反田5-10-1
  • TEL.03-6431-8200 www.gentille-79.com
  • 文:飯野 高広
 
 

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