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SUN MOTOYAMA

2014年7月5日
サンモトヤマ

銀座の老舗セレクトショップは最先端だった

銀座のサンモトヤマは、グッチやエルメス、それにバカラなど数々のヨーロッパの高級ブランドを日本に初めて紹介したことで知られ、名実ともにインポートファッションのセレクトショップ第一人者です。
“正に銀座の名店”というべきサンモトヤマが、この3月に、1964年から半世紀に渡り店舗を構えた旧店舗ビル建て替えにともない、その目と鼻の先、みゆき通りと交差する角の銀座凮月堂ビルの2階と4階に移転したということで訪ねてみました。
今回は、創業者である会長・茂登山長市郎氏にも最上のポジションで常に新しくあり続けるための真摯な取り組みをうかがえた貴重な機会となりました。

 

美しいもので人に幸せを届けるための空間

 

ミラノ大聖堂の扉の制作にも携わったイタリア現代彫刻の鬼才ミングッチ氏がレリーフを施した重厚な木製ドアが誇らしく出迎えてくれます。これは旧店舗でも玄関役を果たしていたもので、サンモトヤマのシンボル的存在のひとつです。

 

深い知見と愛情を感じるファッションフロア

 

2階のファッションフロアに入ると時が経つのを忘れてしまう、秀逸な品揃えに魅了されてしまいます。
男性の私でもレディスのワンピースの華やかなプリント柄を見ふけることができたり、ネクタイやシャツ一つとっても衣服と言うより「着る美術品」のギャラリー感覚でついつい何時も眺めてしまっている…ストールひとつのディスプレイにも、そのものの質感を余すところなく表現しようとする姿勢が感じられます。

 

「美しいものには人を喜ばせ、高め、幸せにする力があるのです。それをひたすらに追い求めなくては」
茂登山会長の言葉通り、深い体験ができるのがこのお店の素晴らしさ。木目が白壁に映えるスッキリとした内装も、商品を引き立てるのに一役買っています。

 

新たな発想を具現化するアートライブラリー

 

一方4階は、サンモトヤマのチャレンジとも言えるアートライブラリー。“生活を楽しみながら時間を謳歌する”をコンセプトに、生活品やアートなどの物と関わる人々との出会いの場、ひいては物作りから得る共鳴を広げるサロンとして運営され、オリエンタルカーペットや北欧の椅子、食器などクオリティと品格の双方を備えた美しい工芸品を豊富に取り揃えています。

 

このフロアはみゆき通りと並木通りの双方から優しい日差しが入り、しかも照明はかつてルーブル美術館で使われていたものを設営しているため、より自然な眼差しで商品と接することができるのが特長。窓際は社長・茂登山貴一郎氏のバー好きを反映させて17メートルにもおよぶ古木のカウンターで縁取られたリラックスした雰囲気です。コマーシャルなどでもよく見かける木村硝子店のシンプルなビアグラスなど、「えっ、この価格で買えてしまうの?」的な名品も実はありますので、決して臆する必要はありませんよ。

 

美しい物への探究心は新しいステージへ

 

創業時から続くインポートファッションへのこだわりに加え、近年はこれまでとは少し異なる方向に探究心を移し、美しい物を求めるお客様へ新たな提案をしています。

 

新提案のキーワードは「素材」と「アジア」

 

一つは布などのファッション用「素材」。たとえばパシュミナは、巷に溢れるものとは肌触りの次元が異なる本来の風合いを求めています。また麻にしっとりとさせたような質感を与えた極上の肌触りで、かつて仏陀の衣として献上されたとも言われるミャンマー産の蓮の茎から作られる「藕糸(ぐうし)織りの布」、さらには氷河期も生き延びたカナダ北極圏のジャコウ牛の産毛「キヴィアック」、こちらは柔らかく強さもあります。このように世間では価値をまだ知られていない希少で繊細な素材を追い求めて紹介しています。

 

それらのショールやストールに触れると、手への吸い付きの秀逸さに驚かされてしまいます。ちなみに蓮布は一枚のショールを作るのに蓮の茎が数万本必要とされるそうです。それほど人の手が掛かっている織物を見ることができるだけでも、ここを訪れる価値は十二分にあります。

 

もう一つは「アジア」。そういった良質の素材はアジアにあります。例えば絶滅危惧種・チールーの毛で作った、今日では売買が禁止の幻の布「シャートゥーシュ」を織っていたインドの職人に、カシミアとニュージーランドから輸入したレッドディアの毛(こちらも希少)をブレンドした糸で手織りをして作ってもらったストールなどがあります。インドやインドネシア、ミャンマーなどで原材料も時間も惜しげもなく使って作られた素材の紹介は、生産地の技術継承とともに、その地域とそこで働く人の発展に寄与していくという視点でも取り組まれています。

 

アジアの職人技とヨーロッパの美意識の融合

 

「蓮の布は繊細過ぎて蓮の茎から取り出すのが現地ではまだ手作業。でも、私たちがこうして紹介することで、そのための機械が開発され生産も用途もより多くなってほしいのです。何せ快適な素材ですから」この糸でできた生地のスーツを着用して対応していただいた茂登山長市郎会長の、鋭くも澄んだ瞳を忘れることができません。

 

「アジアには光の当たっていない優れた素材や職人技が、まだまだあります」。ただしそこは日本の元祖セレクトショップであるサンモトヤマ。ヨーロッパの「美しいもの」に沢山触れて来たこれまでの経験を活かし、現地の様式美を守りつつ西洋的なセンスも兼ね備えたものを選択しているのは流石です。特に4階では日本の作品も多く並んでいますが、いずれも「洋と和の融合」の視点で選ばれたものであり、このお店の一貫したポリシーを感じさせてくれます。

 

今回訪ねた新ショップは、面積そのものは若干コンパクトになったものの、店舗全体を包み込む“美しいものをひたすらに探究する”空気はその分濃密になった気がします。
一つ一つの商品の選定のみならず、接客についても最近の日本人がすっかり忘れてしまった「品」や「落ち着き」を感じさせてくるのは、何とも嬉しい限り。

 

創業者であり日本にヨーロピアンファッションを根付かせてくれた最大の立役者でもある会長・茂登山長市郎氏も、毎朝会社に出勤し海外出張もこなすなど、92歳を超えた現在でもまだまだバリバリの現役です。「『商い』は『飽きない』に通じます。誰も見たことの無いもの、大きなブランドが手を出せない真に価値のあるものを最初に仕入れてお客様を喜ばせるのは、やはり楽しいじゃないですか!」世代を超えた審美眼がますます冴え渡るサンモトヤマは、やはり最上かつ最先端のセレクトショップであり続けます。

サンモトヤマ 銀座凮月堂ビル外観

サンモトヤマ銀座本店はビルの建替えにともない、すぐそばの銀座凮月堂ビルへ移転。銀座並木通りとみゆき通りの交差点角です。

 

サンモトヤマ 茂登山 長市郎 貴一郎

左:代表取締役会長 茂登山 長市郎氏
右:代表取締役社長 茂登山 貴一郎氏

 

サンモトヤマ2階
サンモトヤマ2階
サンモトヤマ2階

2階のファッションフロア。

 

4階入り口

4階アートライブラリーの入り口。

 

サンモトヤマ4階

椅子や食器、工芸品などが並ぶ4階のアートライブラリー。

 

パシュミナ

布の宝石パシュミナ。熟練した職人の伝統的な手織りによる本物の肌触りを堪能できる。

 

藕糸(ぐうし)織りの布

アジアでは古くから仏教を象徴する神聖な植物である蓮茎から作られる「藕糸(ぐうし)織りの布」でできたショールは、ミャンマーで指導を行いつつ製作したもの。しっとりと手に吸い付く感触を是非とも経験したい。

 

キヴィアック

イヌイット語で雲を意味し、カナダの北極圏の過酷な環境を生き抜くジャコウ牛の夏に自然に生え変わる産毛を拾い集めて紡いだ「キヴィアック」のショールは柔らかだが強く、そして何より暖かいのが魅力。

 

レッドディア×ブラウンカシミヤ

インドのブランド・EZMAによるこのストールは、ニュージーランド産のレッドディアとブラウンカシミヤをブレンドした毛を用いて手織されたもの。その感触はもはや幻の布「シャートゥーシュ」に限りなく近い。

 
  • サンモトヤマ銀座本店
  • 東京都中央区銀座6-6-1 銀座凮月堂ビル2F、4F
  • TEL.03-3573-0003
  • sunmotoyama.co.jp
  • 文:飯野 高広
 
 

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