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MAIN D’OR

2014年6月28日
マンドール

細部まで破綻なき、完璧なる美を
身にまとうマンドールの極上手縫い靴

「幻の」などという形容は陳腐ですが、よほどの靴通でもその“作品”を目の当たりするどころか、写真でさえ目にしたことがないという人がほとんどではないでしょうか? マンドール(千葉県松戸市)のビスポークがそれほど希少であるのは、生産量がごく限られていることに加え、販促に控えめだったことも原因なのかもしれません。にもかかわらず、同業者からしばしば讃が贈られるほどにすこぶる高い品質が、とりわけ靴好きたちの間でマンドールの名を有名なものにしてきました。

 

独立直後から高く評価された卓越した技術力

 

主宰者で手縫い靴職人の村田英治さんは1975年、千葉県の出身。実父が靴のパタンナーで、後年、実兄も婦人靴の職人となる、そんな靴作りとかかわりをもつ家庭に育ちました。エスペランサ靴学院(東京・浅草)で製靴の基礎を学んだ後、某社で約3年間、婦人靴の製作に従事。その間、「かがみ式製靴技術」の提唱者でもある各務房男(かがみふさお)氏のもとに通い、手縫い靴の技術を学びます。

 

2004年、29歳で独立し、マンドールを立ち上げると、生来のセンスもあってか、すぐさま卓越した実力を発揮。それがギルドの山口千尋氏に高く評価されるなどし、有望な手縫い靴職人として注目されました。また、当時から今にいたるまで母校エスペランサ靴学院の講師として後身の育成に努めてきたことも、村田さんのキャリアを語るにおいて特筆すべき点といえるでしょう。

 

たゆまず靴作りを深化させ続ける職人魂

 

マンドールの靴はすべからくフルビスポークであり、したがって木型はフルメイキング(採寸などは同工房にて実施)。デザインはフリーで、製法はハンドソーンウェルテッドですが、アップチャージでノルウィージャンやノルベジェーゼも可能です。アッパーには伊イルチアや伊ゾンタのトップグレードカーフなど約20種類を用意(爬虫類系などは別途取り寄せ)。本底はレザーソールのみですが、底材として英J&F.Jバーカーや独レンデンバッハなどの革が選択できます。ユニークなのは、ヒールカップに切り替えを施さない、いわゆるシームレスヒールであること(見た目の美しさ、および耐久性を考慮した仕様)と、本底にヴィンテージスチールが打ち付けられていること(つま先の摩耗防止が目的)で、これらはともに村田さんこだわりの標準仕様。また、1足ごとに、既製品を木型に合わせた形状に削り込んだシューキーパーが付属するのもマンドール流です。

 

が、最も注目すべきは、通常、1回であるはずの仮縫いが2回行われる点でしょう。1回目では工房で装着性などを確認しますが、2回目ではトライアルシューズを1カ月ほど履いてもらい、足馴染みの具合や歩き癖などを確認するのです。マンドールの靴は、その美麗なフォルム、極上の素材、徹底して精緻かつ繊細に作り込まれたディテールなどが誠に魅力的なのですが、しかし、この履き心地への徹底したこだわりこそが真骨頂。生粋の職人であり、それを自らのアイデンティティと心得る村田さんは奇抜なデザインなどに流れることなく、ただ実直に、履き心地、歩き心地という靴の本懐を極めようとするスタイルを貫いています。そして、その真摯な姿勢が、驚異的な製靴技術と相まって、マンドールの靴をこのうえなく品よく見せているのです。

マンドール

イルチアのカーフに美しい鏡面仕上げが施されたビスポークサンプル。各所の縫製はもちろん、トウキャプに施されたパーフォレーションや小刻みのビンキング(ギザ飾り)も破綻なく、実に美しい。

 

マンドール

人の足型に適った複雑フォルムやオーバル形のトップホール、シームレスヒールなどが製甲&吊り込みの高度な技術を証明する。

 

マンドール

細く絞り込まれた、いわゆるベヴェルウエストには優美なロール仕上げを導入。フィドルウエストなどにすることも可能。なお、写真はヴィンテージスチール装着前の状態である。。

 
  • MAIN D'OR/フルビスポークシューズ 29万円~(税込) ※製作期間約1年
  • お問合せ:マンドール TEL.047-710-5289
  • 文:山田 純貴
 
 

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