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SPIGOLA

2013年4月6日
スピーゴラ

世界も認めた高いクオリティと無比なる繊細美

若手の靴職人たちが自らのブランドを謳い、次々とデビューし、その実力を競い合っているかにも見える昨今。そうした彼ら日本の職人たちがもつ技術力と感性の高さは、疑いなく世界トップのアベレージであると思われますが、振り返るに、現状に至る発端はギルドの山口千尋さんと、それに続くスピーゴラの鈴木幸次さんの登場でした。しかも山口さんが英国で腕を磨いたのに対し、鈴木さんはもうひとつの靴大国イタリアにてロベルト・ウゴリーニさんのもとで研鑽したという点で好対照であり、それが興味深くもあります。

 

海外でも高く評価されている実力

今回は、その鈴木幸次さんのご紹介です。1976年、神戸市に生まれ、靴のパタンナーである父親の跡を継ぐべく、その技術習得を目的に22歳で渡欧した鈴木さんは、しかし、フィレンツェでウゴリーニさんと出会ったことで、パターン(型紙)作成から手縫い靴の製作に転向を決意し、同氏に師事しました。そして3年間の修業を経て2001年4月に帰国し、靴の一大生産地である神戸市長田区で父親が構えていた工房を間借りし、自らのブランドを冠したビスポークの製作に取りかかります。すでに当時、日本でもウゴリーニさんは著名でしたから、その愛弟子が日本で受注を始めたという情報は靴好きの間で大いに話題になったものです。
2011年にはプレタブランド「スピーゴラ カポラボーロ」(実質的には受注生産方式による九分仕立てのパターンオーダー。仮縫いなし。製作期間3カ月~4カ月。10万8000円~)を立ち上げ、10年ほど前、自らの工房兼店舗も開設。さらに国内の人気ショップのみならず、この数年は香港のセレクトショップで年3、4回のオーダー会を開催したり、世界的なファッションブランドがロンドンで展開をスタートさせたシューズコレクションにてディレクターとして監修を行うなど、その活動範囲は海外にも及んでいます。

 

たゆみない探求を経て到達したフォルム

写真の6型は、そのビスポークサンプルのうちの一部です。それぞれの詳細は割愛しますが、素材は鈴木さん自らが渡欧し、厳選のうえで買い付けたトップグレードのみで、ウィングチップ外羽根のロシアンカーフや、サイドエラスティックスリッポンのクロコヌバックなど珍しい革も選択可能です。また、ハンドソーンウェルテッド、ハンドノルベジェーゼ、グッドイヤー、マッケイなど製法の選択も可能。ビスポークの製法はハンドソーンウェルテッドに限定されがちですが、スピーゴラではより幅広いニーズに対応できるのです。
しかし、最も注目すべきは木型です。たとえば前述のウィグチップ。トウがインサイドに屈曲した内ひねりの形状、内踏まずが著しくカーブするベヴェルウエスト、立体的に絞り込まれたトップホールなどコンフォオートを追求したフォルムであるのは大前提で、加えて、優雅な曲線を描く伸びやかな捨て寸、控えめに膨らみをもつトウボックス、屹立しつつも品よく丸みをもたせたサイドウォールなど、諸要素が動かしがいたいバランスで調和しています。
「鋭角さやシャープさを少し採り入れて男らしいセクシーさを見せつつ、飽きずに長く履いていただけるよう、あくまでベースはクラシックにという狙いで、悩みながら出来あがった木型です。イタリア時代からすると、少しスマートかもしれませんね」(鈴木さん) もちろん仕立ての素晴らしさは言わずもがなで、6型はいずれも、ある種のオーラが感じられるほどの見事な出来栄え。彼に続くビスポーク職人たちの仕事にも大いに感心させられますが、どうやら鈴木さんは、すでにその先を歩んでいることが実感できるのです。

 

SPIGOLA(スピーゴラ)

ファーストオーダー価格31万5000円~(クロコダイル使用は65万1000円~)。製作期間約1年(仮縫い含む)。

スピーゴラ

体の重心が絶えずインサイドに向かう内ひねりの形状で、しかもトップホールのアウトサイドがインサイドに比して著しく低いなど、ビスポークならではのコンフォートな木型であることが理解できる。

 
  • お問合せ:スピーゴラ TEL.03-078-641-1343 ※水曜定休
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  • 文:山田 純貴 写真:新城 孝
 
 

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