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英国カントリーブーツのシンボル的存在“トリッカーズのカントリーブーツ”

連載|BOQ的永遠のマスターピース
世代を越えて輝きを放ち続ける傑作と呼ばれるアイテムを紹介するこのコーナー。
これからも、この先も、変わらず愛されていくであろうマスターピースをBOQの視点でピックアップします。

 

トリッカーズ

 

トリッカーズのカントリーブーツ
英国カントリーブーツのシンボル的存在

 
「最もトラディショナルな英国靴のメーカーは?」この質問に読者の皆さんはどう答えますか? もちろん回答は一つになる、筈がありません。でも、個人的な好みを抜きにして落ち着いて考えれば、「トリッカーズ」という答えを意外と多くの方が導き出すのではないでしょうか。
 

トリッカーズ歴史1
トリッカーズは1829年、靴職人ジョセフ・トリッカー氏によって創業。英国における製靴の一大生産地であるノーサンプトンの現存する最古のシューメーカー。
もちろんその根拠は幾つでもあげられるでしょう。タフでとにかく長持ちすること、このメーカーのものとすぐにわかる流行とは無縁のちょっと無骨なデザイン、他の英国靴メーカーに比べ木型や型紙の数を絞り込んでいる分ロングセラーの定番モデルが何気に多い点などなど…… しかし、やはり最もその理由に相応しいのは、イギリス文化の象徴ともいえるカントリーサイド向けのシューズとブーツに、ビジネス向けのドレスシューズ以上に力を入れてくれていることではないでしょうか。

 

野山を歩くことを前提とした優れた防水・防汚性

トリッカーズ革

その典型が、アッパーにCシェイドタン色のゴースカーフを用いた写真の一足でしょう。このアッパーは他の靴メーカーのものでは殆ど見られない、言わばトリッカーズのカントリーラインの靴のためだけに存在するようなもの。新品の段階ではややマットで平板な印象で、革自体の厚みと硬さもあるので靴クリームが正直入り難いです。私も今から20年ほど前、初めてトリッカーズのこのアッパーの靴を買った時は、その強情さに相当難儀しました。
また、表面の塗膜を厚めに仕上げているせいなのか、ガラスレザーでもないのに靴クリームが革の表面に浮くと言うか弾いたまま、内部に全く染み込まない。下手しなくてもアメリカの分厚いオイルドレザー系のワークブーツ以上の、相当な手強さ…… しかし実はこれ、不意な雨の多いカントリーサイドでの使用を考慮した、撥水性重視の確信犯スペックなのです。

 

堅牢ゆえに履きこなすには時間が必要な靴

天候を気にせずガンガン履き続けてゆくと、本当に徐々にではありますが革の表情が「ほどけて」来て、次第にお手入れもし易くなるとともに足にも馴染みはじめます。そうなって来るとシメたもので、厚めのインソールにも自分の足形がしっかりプリントされ、あんなにぶっきらぼうで扱い難かったものが、いつの間に手放せなくなると言うか、暫く履かないと無性に恋しくなるのですから不思議なものです。うわべだけのアンティーク加工なんてまるで通用しない、本気で履き込んだ人だけが享受できる無二の経年変化。耐久性を考慮した革をアッパーに用いる傾向が強いトリッカーズのカントリーラインの靴の中でも、このゴースカーフのものは履き手に忍耐、いや長年親身に付き合ってゆくだけの覚悟が求められる気がします。

トリッカーズ

あと、この靴には快適に履くためのちょっとしたコツもあります。トリッカーズの靴は側面から見るとかかとの造形が直角ぎみで、何しろ本来はカントリーサイドでの長時間の歩行を目的にしたものでもあるので、この靴にはやや厚手の靴下、できればウール系のものを合わせないと本来の実力が発揮できません。いくらカジュアルに用いるとは言っても、巷ですっかり主流になったスニーカーソックスではちょっと役不足かも……
 
こんな感じである種の「作法」こそ色々求められはするのですが、トリッカーズのこの靴からは、表層的なラグジュアリーに振っていなかった頃のかつてのレンジローバーのような、英国生まれらしい強さと気高さ=トラディショナルの真髄を、長い時間を掛けて味わえること確実です。単にファッションとしてではなく、人生と靴との継続的なかかわりまで考えさせてくれる一足って、今時なかなか貴重だと思うのです。
 

製品に関するお問合せ:GMT(ジーエムティー) TEL.03-5453-0033

文:飯野 高広

2018.09.02 UPDATE

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