英国カントリーブーツのシンボル的存在“トリッカーズのカントリーブーツ”
世代を越えて輝きを放ち続ける傑作と呼ばれるアイテムを紹介するこのコーナー。
これからも、この先も、変わらず愛されていくであろうマスターピースをBOQの視点でピックアップします。
トリッカーズのカントリーブーツ
英国カントリーブーツのシンボル的存在
「最もトラディショナルな英国靴のメーカーは?」この質問に読者の皆さんはどう答えますか? もちろん回答は一つになる、筈がありません。でも、個人的な好みを抜きにして落ち着いて考えれば、「トリッカーズ」という答えを意外と多くの方が導き出すのではないでしょうか。
野山を歩くことを前提とした優れた防水・防汚性
その典型が、アッパーにCシェイドタン色のゴースカーフを用いた写真の一足でしょう。このアッパーは他の靴メーカーのものでは殆ど見られない、言わばトリッカーズのカントリーラインの靴のためだけに存在するようなもの。新品の段階ではややマットで平板な印象で、革自体の厚みと硬さもあるので靴クリームが正直入り難いです。私も今から20年ほど前、初めてトリッカーズのこのアッパーの靴を買った時は、その強情さに相当難儀しました。
また、表面の塗膜を厚めに仕上げているせいなのか、ガラスレザーでもないのに靴クリームが革の表面に浮くと言うか弾いたまま、内部に全く染み込まない。下手しなくてもアメリカの分厚いオイルドレザー系のワークブーツ以上の、相当な手強さ…… しかし実はこれ、不意な雨の多いカントリーサイドでの使用を考慮した、撥水性重視の確信犯スペックなのです。
堅牢ゆえに履きこなすには時間が必要な靴
天候を気にせずガンガン履き続けてゆくと、本当に徐々にではありますが革の表情が「ほどけて」来て、次第にお手入れもし易くなるとともに足にも馴染みはじめます。そうなって来るとシメたもので、厚めのインソールにも自分の足形がしっかりプリントされ、あんなにぶっきらぼうで扱い難かったものが、いつの間に手放せなくなると言うか、暫く履かないと無性に恋しくなるのですから不思議なものです。うわべだけのアンティーク加工なんてまるで通用しない、本気で履き込んだ人だけが享受できる無二の経年変化。耐久性を考慮した革をアッパーに用いる傾向が強いトリッカーズのカントリーラインの靴の中でも、このゴースカーフのものは履き手に忍耐、いや長年親身に付き合ってゆくだけの覚悟が求められる気がします。
あと、この靴には快適に履くためのちょっとしたコツもあります。トリッカーズの靴は側面から見るとかかとの造形が直角ぎみで、何しろ本来はカントリーサイドでの長時間の歩行を目的にしたものでもあるので、この靴にはやや厚手の靴下、できればウール系のものを合わせないと本来の実力が発揮できません。いくらカジュアルに用いるとは言っても、巷ですっかり主流になったスニーカーソックスではちょっと役不足かも……
こんな感じである種の「作法」こそ色々求められはするのですが、トリッカーズのこの靴からは、表層的なラグジュアリーに振っていなかった頃のかつてのレンジローバーのような、英国生まれらしい強さと気高さ=トラディショナルの真髄を、長い時間を掛けて味わえること確実です。単にファッションとしてではなく、人生と靴との継続的なかかわりまで考えさせてくれる一足って、今時なかなか貴重だと思うのです。
製品に関するお問合せ:GMT(ジーエムティー) TEL.03-5453-0033
文:飯野 高広
2018.09.02 UPDATE
WHAT'S NEW

ドイツの老舗筆記具ブランド、ディプロマットが飛行船ツェッペリン号をイメージにデザインした「アエロ」シリーズ。本体のアルミニウムを鮮やかな「レッド」と「バイオレット」に染め上げた新色2色が発売に。 続きを読む
TOPICS 2021.02.12

最新モデル「フォークス」は、日本人の足にも馴染みやすい「ラスト1886」を採用。絶妙な長さのノーズと英国靴伝統の丸みのあるラウンドトゥを持ち、ラバーソールながらもゴツさは皆無。オン・オフ使える着回しの利く一足に仕上げている。 続きを読む
FORCUS 2021.02.10

ラミーの永遠の定番「ラミー サファリ」の2021年限定色は、海や大地を思わせるアースカラーが印象的。変容する社会へのメッセージを込めて、1980年の初代カラーを約40年ぶりに復刻しいます。 続きを読む
TOPICS 2021.02.09

1980年代半ばに誕生したニューバランスのアイコンモデル「574」と90年代のウェービーなデザインを、現代へシフトさせた次世代のスニーカー「57/40(フィフティセブン/フォーティ)」より、ロマンティックな新色が登場。 続きを読む

万年筆の一般的なペン先とは異なり、先端部分しか見えない独特の形状の「パーカー51」は、1941年に誕生し1978年ごろまで約2千万本が製造されたロングラン万年筆。パーカーの10年ぶりの新しいコレクションとして復刻します。 続きを読む
FORCUS 2021.02.05