BOQ > 特集 > フィボナッチ紳士洋品店 - 下町に店を構える正統派メンズショップ

フィボナッチ紳士洋品店 - 下町に店を構える正統派メンズショップ

2017年12月11日
フィボナッチ紳士洋品店

 

フィボナッチ紳士洋品店

下町に構える正統派メンズショップ

8月20日にオープンした「フィボナッチ紳士洋品店」へ行ってきました。“洋品店”という言葉が懐かしく思えて、しかも“フィボナッチ”というイタリアのブランドを思わせる和洋折衷な店名に惹かれて取材してきました。
 

フィボナッチ紳士洋品店

お店の場所は墨田区の鐘ヶ淵駅(東武スカイツリーライン)から少し歩いた場所。この界隈は東京の下町なのだが、先の大戦中も戦火を免れたそうで、昔の東京を感じさせる雰囲気が残っているのだ。
 
この鐘ヶ淵には鐘淵紡績の紡績工場があった。明治から昭和初期にかけて国内企業売上高1位を誇ったほど、この町は栄えていたのだ。残念ながら1969年に紡績工場は閉鎖されるのだが、全盛期には何千人の女工さんが鐘ヶ淵の駅から紡績工場へ通っていたらしい。
 
 
 

フィボナッチ紳士洋品店

さて、店主の郷間裕さんに出店の経緯を伺ったところ、当初は違う街の雑居ビルでオープンさせようと思っていたそうだが、親戚が住んでいたこの建物が空くことになり、急きょ変更。改装して路面店で出店することになったのだ。しかも隣が「ひまわり洋品店」という親戚のおばさんが経営する婦人服のお店。この「ひまわり洋品店」から店名の一部をもらったそうだ。
 
で、気になるフィボナッチの由来は、イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチ(1170~1250年)から命名。有名なフィボナッチ数列を西洋に広めた偉い人で、自然の中に数学的なルールがあることを見つけた人らしい。ひまわりの種の規則性や、貝殻の渦巻きの黄金比などだ。「ひまわり洋品店」の“ひまわり”つながりで、この数学者の名前を店名にしたそうだ。結果的にすごくいい店名になったと思う。
 
 

提案するのはオーダーメイドにこだわったアイテム

前置きが長くなってしまったが、「フィボナッチ紳士洋品店」の取り扱いアイテムを紹介しておく。このお店はすべて国内生産のオーダー品のみ。靴クリームやボウタイなどの一部の商品を除いて既製品はない。
 
メインは靴のオーダーで、宮城興業によるグッドイヤーウェルテッド製法のオリジナルシューズだ。郷間さんの前職はその宮城興業で12年間にわたって靴作りに携わってきた経緯がある。それだけに木型のこと、革のこと、フィッティングを熟知しているのだ。システムは革や靴のデザインを選べる、いわゆるパターンオーダー。靴に熟知している郷間さんにフィッティングしてもらえるだけで、安心感がぐっと増すのだ。
 

フィボナッチ オリジナルシューズ

 
オリジナルシューズの木型は宮城興業の3種類の木型を使用。デザインは、ダブルモンクやストレートチップ、ウイングチップなど60種類にも及ぶ。並んでいるサンプル以外は写真で選ぶことができる。革は国産のキップが中心で、海外の革だとアノネイなどの有名タンナーのもの。国産キップ使用の短靴3万8000円~、ブーツ4万2000円~。アノネイの革だと16000円アップ。ヒールを高くしたり、アウトソールの伏せ縫いはオプションで対応している。
 
 
ネクタイは国内の老舗ネクタイメーカーに依頼。個人的にも信頼しているメーカーだ。選べる生地は、シンプルな柄から最近では見かけなくなった珍しい小紋柄まで揃っていて、長さや幅、仕上げを選ぶことができる。大剣の幅は6~10センチ、長さは140、145、 150センチから選べ、裏地ありとなしを選択できる。セッテピエゲも裏地ありとなしが選べる。今のところバンチブックではなく、出来上がりを予測しやすい大きめの生地を揃えている。価格1万4000円~。納期1ヶ月。
 

フィボナッチ オリジナルシューズ

 
ネクタイの長さはとても大切。ちなみにボクはプレーンノットでしか結ばないから、締めたときにベルト位置より長くなってしまうことが多い。長さをオーダーできるのは有り難いことなのだ。
 
シャツは豊富な生地と衿型から選べて、価格8900円~とお手頃。この値段で国内生産のパターンオーダーは安いと思う。納期3週間。
 

フィボナッチ オリジナルシューズ

 
オリジナルスーツはスタンダードラインと高級ラインの2型があり、ともに国内のファクトリー製。ファクトリー名は明かせないが信頼できる有名なファクトリーだ。デザインは郷間さんの好みもあり、ブリティッシュスタイルのベーシックなモデルに仕上がっている。
 
サンプルのゲージを着用して、余分な生地をピンで留めて補正していくシステムだ。郷間さんはこの店舗をオープンさせる8ヶ月の準備期間中にフィッティグの技術をしっかりと身に着けている。取材時に高級ラインのゲージを着用させてもらったが、着やすくていい型紙だと思う。
 
生地はいろいろあるが、ハリソンズ・オブ・エジンバラとジョンストンズ・オブ・エルガンの英国生地はおすすめ。とくにジョンストンズのヘリテージツイードのコレクションはヘビーウエイトな重厚な生地で、ジャケットにおすすめしたい。国産の生地を使ったスーツの価格4万9000円~。納期1ヶ月。
 

フィボナッチ オリジナルシューズ

 
紳士洋品店という店名から紳士小物のイメージが強いが、もちろんスーツにも力を入れている。価格もかなり抑えているので、初めてオーダーする人にもおすすめだ。本来ならテーラーと名乗ってもおかしくないのだが、靴メーカー出身ということもあって、郷間さんは遠慮しているのである(笑)。
 
 

アメ横で学び、ドレスシューズに目覚めた20代が原点

郷間さんの10代の頃はちょうど渋カジブームと重なり、とうぜんファッションは渋カジ。高校が私服ということもあり、足しげくアメ横に通ったという。柏に住んでいたので渋谷はアウェイだったのだ(笑)。501の古着やエイチバーシーのウエスタンシャツ、アイクベーハーのシャツ、マウンテンパーカ、カバーオールなど、アメリカのブランドをいろいろ買った。当時、ジーパン屋のオヤジからいろいろ教わったことが、現在の紳士洋品店につながっているそうだ。
 
足元はトニーラマのウエスタンブーツやレッドウィングなどのワーク系を履いていたが、社会人になり初任給で本格的なドレスシューズを買った。新宿三越南館に入っていたワールドフットウェアギャラリーでイタリアのロブスを購入したのだ。マッケイ製法のその靴はとても履きやすく、ドレスシューズに目覚めるきっかけになったそうだ。
その後はオールデン、エドワードグリーン、ジョンロブ、ジェイエムウエストンなど高級既製靴を買いまくった。そして30歳の時に靴好きが高じて山形の宮城興業へ転職するのだ。
 

フィボナッチ紳士洋品店

そんな彼がクロージング全般の大切さを知ったのは度々百貨店の店頭で接客する機会があり、トータルコーディネイトの大切さを感じたからだ。靴だけではなくてスーツやシャツ、ネクタイとのコーディネイトをお客さんにアドバイスしたくなったのだ。
 
もともと探究心の強い性格で、会社で働きながら、「ギルド」で活躍した靴職人の江川治さんの靴教室に通い、ハンドソーンウェルテッド製法の技術を習得するなど、オタクの域を超えていたほど(笑)。靴だけでなくモノ全般を見る目がとても肥えているのだ。
 
 

日本文化と融合させた洋品店に育てていきたい

フィボナッチ紳士洋品店

だから「フィボナッチ紳士洋品店」で取り扱っているアイテムは一貫性がある。西洋から来た洋服をそのまま受け入れるのではなく、日本文化と融合させて提案していく、そんなスタイルにこだわっているのだ。また、現段階ではネット販売はしていない。あくまでも店舗での対面形式で買ってもらいたいそうだ。店主になった今、学生時代に通い詰めたアメ横での会話のキャッチボールをもう一度してみたい。そんな気持ちなのだろう。
 
 
 
面白いのは店内の奥が和室になっていて、古い掛け時計(クオーツに改良)やペイズリー柄のふすま、洋服の生地で作った座布団など、ところどころに和と洋のテイストが融合しているのだ。鐘ヶ淵という下町の情緒と不思議に馴染んでいるお店が「フィボナッチ紳士洋品店」なのである。
 

フィボナッチ オリジナルシューズ

 

フィボナッチ紳士洋品店
東京都墨田区墨田5-4-7
TEL.03-6874-3505
営業時間:12:00~20:00 不定休
fibonacci.tokyo.jp

 

文:倉野 路凡


 

onlineshop