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“DO IT YOURSELF” 第2回 経年変化をポジティブに

2017年10月16日

DO IT YOURSELF

FUN TO CARE SPECIAL 靴の楽しみ方最前線 “DO IT YOURSELF”

第2回 経年変化をポジティブに

コニャックやバーガンディといった明るめのドレスシューズは、足元を軽快に演出してくれますし、淡色のトラウザーズの良きパートナーです。ときに単調になりがちなコーディネートのスパイスとも言うべき存在ですが、ちょっとした雨などで、ついつい汚してしまいがちです。トゥについた小傷をまえに履くことをためらった経験はBOQの読者の方なら一度はあるのではないでしょうか? 今回はそんな明るいアッパーのドレスシューズのリダンとでも言うべきアンティーク仕上げについて、レクチャーしたいと思います。
 
その前に、インスタグラムで「#patina」を検索してみて下さい。靴の画像も出てきますが、ほとんどは経年変化により独自の存在感を放つ自動車の画像です。大半の欧米人にとってPatina(パティーナ)という言葉から連想するイメージは、使いこんで味がでた風合いのことで、彼らは経年による変化をポジティブにとらえている事がうかがえます。欧米人にとって自動車は生活の一部ですから、最も思い入れのあるアイテムでそういった変化を愉しんでいるわけです。
 

グラデーションで濃淡を描きメリハリを

では、実際にアンティーク仕上げをやってみましょう。まずはアッパーにラッカーコーティングが施されている場合があるので、それをクロスに湿らせたエタノールや除光液で取り除きます。このときエアホットガン(高温なのでアッパーの焦げつきや火傷に十分注意してください)で暖めながら行うと溶剤がすぐに揮発してシミを防ぐことができます。また、表面が白濁する場合は水性アクリルのコーティング剤が施されているので、除光液で少しづつ取り除きましょう。
 
クリーニングが終わったら、ニュートラルのクリームやワックスを用いて一度磨きあげてしまいます。意外かもしれませんが、私がいたフランスのメゾンでは、先に軽く磨いてからカラーレーションをする事が頻繁にありました。手染めのニュアンスを決める重要な要素はグラデーションが滲むことです。そのため、境界をはっきりと描いてはいけません。染料を入れ過ぎず、境界をボカシながら濃色を入れたいので、クリームやワックスにバッファの役割を求めるわけです。

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コーティングを取り除き色が入りやすい状態にします。エアホットガンはドライヤーと同じ構造で高温の熱風が出るようになっています。
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クリーニング後に、ビーズワックスの配合率が高いサフィールのビーズワックスファインクリームのニュートラルをバッファとして使用。

 

DO IT YOURSELF
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さて、磨きあげた靴にいよいよ濃色でグラデーションを施していきます。コットンネルか穂先を短くしたドライブラシ用の筆(模型店で簡単に購入出来ます)を用いて。染料が入り過ぎないよう、タオルに十分擦りつけるなどして液体量を調節してからグラデーションをかけるのがポイントです。
 
グラデーションをどう施したら良いか、イメージが湧かない場合はインターネット画像などで”お手本”を探してから始めるのも良いでしょう。場合によってはあらかじめスケッチなどをして、どこに濃色を入れるかイメージを固めてからトライしてみて下さい。また、一度濃くなった箇所は元に戻しにくいので、慎重におこなってください。グラデーションを描き終えたら、染料の定着を促す意味でエアホットガンを入念にあててグラデーションをアッパーに定着させます。そして、最後にあらためて全体を磨きあげ完成です。
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モノとの付き合い方を見直す

こうして出来あがった靴はアンティークかつエレガントな印象で、最初のイメージとは異なるグラマラスな存在感を放つ靴になりました。 『履かなくなった靴をどうするか?』 大半の答えはネットオークションに出品したりということになるのでしょうが、休日に愛靴をカスタマイズする愉しみという選択肢も、今後は増えてくるかもしれません。
 
次回はエアホットガンの意外な活用法についてご紹介したいと思います。

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佐藤 哲也(サトウ テツヤ)
大学ではプロダクトデザインを専攻し、その後は仏靴メゾン2社でカラーリストとして腕を磨く。靴に限らずさまざまな領域のカラーリングを手掛けている。伝統的な業界の手法とは異なるアプローチを志向し、顧客参加型のビジネスを立ち上げるべく新しいアトリエの引越し先を物色中。

 

写真:桑田 望美


 

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