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アメリカの眼鏡の黄金期と呼ばれる貴重なヴィンテージフレームのオーダーメイド眼鏡

2017年2月6日

ザ・スペクタクルス

第9回 The Spectacle

アメリカの眼鏡の黄金期と呼ばれる
貴重なヴィンテージフレームのオーダーメイド眼鏡

アンティークフレームのコレクションで有名なロスアンジェルスのザ・スペクタクル。コレクションの中心は1920年代~’40年代のアメリカ製の“金張り(ゴールドフィルド)フレーム”の眼鏡だ。アメリカンオプティカル社を中心にボシュロム、シューロンといった三大眼鏡フレームメーカーのものを取り扱っている。金張りフレームとは、メッキではなく地金の上に分厚い金のシートを巻いたもので腐食にも強いという。
さらに、興味深いのはオーダーメイドでフレームの仕様を誂え、変更することができるのだ。今回はザ・スペクタクルを取り扱うグローブスペックスの代表である岡田哲哉さんに、眼鏡の歴史とザ・スペクタクルについて話を伺ってきた。

 

ザ・スペクタクルス

今回お話を伺ったグローブスペックスの代表である岡田哲哉さん。

ザ・スペクタクルス

 
 

それまで修道院の図書室や貴族の書斎でしか見られなかった眼鏡

眼鏡が普及し始めたのは19世紀後半になってからのこと。それ以前の眼鏡は教会関係者や貴族といった上流階級の人たちが書物を読むために、鍛冶屋やシルバースミス(銀細工師)に作らせたという特権階級の特別な持ち物だったそうだ。一点一点手作りのため耐久性もあり、素材も金や銀などの貴金属が用いられ、当時は高級品だったのだ。
20世紀に入って眼鏡が一般庶民にも品質と耐久性を提供するために、1910年代頃に金張りが作り出されたが、金張りには14金と16金が使われ、イエローゴールドだけでなくホワイトゴールドでも作られていた。

 

ザ・スペクタクルス

写真上が鼻に挟む鼻眼鏡、下が一山式の眼鏡。

ザ・スペクタクルス

18~19世紀に作られた贅を尽くした眼鏡。

 
 
 

19世紀後半から自家用車やラジオ、洗濯機、冷蔵庫等とともに眼鏡も普及

なかでもアメリカンオプティカル社は歴史もあり、眼鏡デザインの歴史といってもいい。ここで眼鏡の歴史を変えたエポックメーキングなモデルを簡単に説明しておこう。1910年代までは鼻当てがなく、一山式としてブリッジがその役目を兼ねていた。1920年代に鼻当てが開発されると、ブリッジの機能としての役割から解放され、ブリッジへの彫金細工などデザインが多様化していく。
また、第一次世界大戦の影響で、ジュエリーの需要と生産が激減。職を失ったジュエリー職人が眼鏡業界に参入して腕を振るい、装飾的な彫金をフレームに施すようになる。これを機に1920年代以降、眼鏡のジュエリー化が進んでいった。

 

ザ・スペクタクルス

この時代の眼鏡には美しい細工が施された美品が集中している。

ザ・スペクタクルス

現行品でこれほど細かな彫金を見ることは出来ないだろう。

 
1930年代になると、ガラスレンズの側面に板バネのようなものを3枚重ねして、レンズを保護する緩衝材の機能を備えた「ニューモント」モデルが登場する。見ためのデザインだけでなく機能性も追求し始めたということだ。
 
また、その頃はレンズの真横にテンプルの付け根があり、視界の妨げになっていた。そこでテンプルの位置を上方へ押し上げたのが、いわゆるボストン型(P-3)と呼ばれるモデルだ。この広い視界を実現した“フルビュー”という考えはそれ以降の常識になっていったそうだ。
 
その後「ニューモント」を改良した「リムウェイ」というモデルを発売。これはレンズを2箇所留めにすることで、レンズの軸ズレを防止する画期的なモデルだった。1930年代後半から1940年代にかけて流行したという。
 
現在ではアセテートやメタルなど、様々な素材の眼鏡が当たり前だが、1910年代までは金張りフレームしかなかったのである。また、今では考えられないが、テンプル、ブリッジ、玉型が何種類も用意されていて、お客さんがそれぞれのパーツを選んで、組み合わせたものを購入していたそうなのだ。現在でいうパターンオーダーのような感覚だ。
 

ザ・スペクタクルス

昔はサイズ違いやフォルム違いのパーツを多数用意し組み合わせていた。

ザ・スペクタクルス

テンプルだけでもこれだけのバリエーションが用意されていた。

 
 

往時と同じ方法でオーダーメイドできる眼鏡

話が長くなってしまったが、ザ・スペクタクルでは当時と同じように、オーダーメイドで眼鏡を作ることができるのだ。まず、縁無しのリムレスでは「スリーピース」(テンプル2本とブリッジからなる3パーツ構造の古いタイプのもの)、「ニューモント」、「リムウェイ」、そして40年代の「バーブリッジ(モダン化された一文字ブリッジのデザイン)」などの基本デザインを選択。縁があるフルフレームも豊富なバリエーションがあるのでデザインを選ぶ。その後彫金の種類を選び、玉型の種類、DBL(レンズの間の距離のこと。ブリッジサイズ)のサイズも選ぶ。中にはフレームの彫金が無いレアモデルもある。それぞれに種類も多く、自分に似合うかどうかも迷ってしまいそうだが、ちゃんとスタッフがお客さんの好みを考慮してアドバイスをしてくれるのだ。余談だが、岡田さんによると、レンズを小さくしてブリッジ幅を狭くするとカッコよく見えるそうだ。また、完成をイメージしにくい場合は、スーツの仮縫いのように度のないレンズで型を作って確認するという方法もあるそうだ。細かいことは相談してほしい。
 

ザ・スペクタクルス

1935年のカタログを見ると各パーツが多種類用意されていたことが分かる。

ザ・スペクタクルス

小ぶりなレンズでブリッジ幅を狭くすると目鼻立ちが美しく見える。

 
 

生産された同時代の機械で当時と同じ仕上げを行う

「アンティークともいえるような古い眼鏡で大丈夫?」と心配になる方も多いと思う。ザ・スペクタクルの会社であるレトロスペック社は、デッドストック品、ユーズド品にかかわらず、超音波洗浄を施し、すべてパーツごとに分解し、製造された当時と同じ手法と機材を用いて、製造時最終工程の仕上げ作業を行ってから組み立てている。つまり分解した段階で各パーツを丁寧に研磨し直すのだ。当時使われていたタンブリングマシンと呼ばれる多角形の樽に、オーク材のチップと一緒にパーツを入れて長時間グルグル回すらしい。日本でいうところのガラ入れという工程だ。この工程によってユーズド品もデッドストック品も新品のように輝きを取り戻すのだ。
 

ザ・スペクタクルス

1935年当時の眼鏡工場の様子。

ザ・スペクタクルス

 
 

当時のフレームと部品を大量に抱える奇跡的なブランド

「壊れたらパーツ交換してくれるの?」という不安もあるに違いないが、こちらも大丈夫だ。レトロスペック社は10年間修理できることを前提に、パーツを確保しているのだ。というより、大量にパーツを集めたモデルのみ製品化して販売しているのだ。岡田氏によると、20年近く前にザ・スペクタクルの眼鏡を買われたお客さんが、先日テンプルが壊れたという修理依頼があったそうだ。レトロスペック社に問い合わせしたところ、依頼品のパーツの予備がまだあり、無事にパーツ交換できたとのこと。ちなみに同社にはベークライト製の鼻パッドも大量にストックしてあるそうだ。現行品の眼鏡のアフターサービスは僅か数年。それを考えれば安心して購入できるというものだ。
 

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ブリッジのバリエーション。

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エボナイト製のノーズパッドだけでもこれだけのバリエーション。

 

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玉形のバリエーション。

ザ・スペクタクルス

 
 

部品だけでなく当時の情報を正確に把握

レトロスペック社の凄いところは、各ブランドの過去のカタログを揃えているということ。ほとんどアーカイブだ。つまり何年にこのモデルが生産され、使われていた各パーツのデザインも完璧に把握しているということ。そのためオリジナルに忠実に再現できるのだ。サイズが合うからと勝手に違うモデルのパーツを組み合わせることはしないのだ。
そして、ザ・スペクタクルのオーダーメイドはなんと既製品と同じ価格だ。これだけでもお得感がある。ちなみにアセテートのザイルコレクション(1950~1970年代)でも、色を選べるなどオーダーメイドできるとのこと。興味のある方はお店を覗いてもらいたい。

 

ザ・スペクタクルス

1935年のアメリカン・オプティカルのカタログ。

ザ・スペクタクルス

デッドストックやユーズドと一緒にカタログも収集し検証している。

 

ザ・スペクタクルス

1950~1970年代のアセテート製ザイルコレクション。

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Price

レギュラーコレクション
1920~40年代のアメリカの三大眼鏡フレームメーカー、ボシュロム、シューロン、アメリカン・オプティカル社製の金張りフレームで構成。56000円〜151000円。
スペシャリティーコレクション
個人が別注したハンドメイドの特別な1本から当時より元々の生産本数が少なかったコレクション。109000円~387000円。

 

ミュージアムピース
さらに希少性が高く、トランクショーの時のみに販売。295200円~。
ZYL
プラスチックシリーズ。56000円~290000円。

 

コンビネーション
’50s~のコンビネーションシリーズ。72000円~109000円。

 
 

ザ・スペクタクルス
GLOBE SPECS渋谷
東京都渋谷区神南1-7-9-1F
TEL.03-5459-8377
営業時間 11:00~20:00

 
岡田哲哉さんは1980年代に眼鏡業界に入り、1998年にグローブスペックスをオープン。海外からの直接買い付けした魅力的な多くのブランドを揃えている。店内はアンティークの什器や見慣れない鍵や電気のスイッチなど、岡田さんのこだわりが店内にほどよい温もり感と洗練された雰囲気を出している。

 
 

文:倉野 路凡  写真:桑田 望美


 

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