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MISAWA & WORKSHOP

2015年11月4日

ミサワ&ワークショップ

- BOQ PRESENTS - WE LOVE SHOES MADE TO ORDER  Vol.4 MISAWA & WORKSHOP
 

三澤作の手製靴は、履くことをためらうほどの“美”をまとう

美しく、巧みに作られた靴をしばしば「芸術」と讃えることはありますが、それでも靴とは、あくまでも“歩くための道具”なのです。とはいえ、靴を手に取って鑑賞することを歓びとする好事家は少なくないはず。靴職人の三澤則行(のりゆき)さんもそうしたひとりで、しかも鑑賞の趣味が高じて、顧客のためのビスポークを作りながら、夜には靴をモチーフにしたアート作品の制作に励む日々を送っているのです。

 

宮城県出身の三澤さんは大学時代、バイト先の衣料店でトリッカーズに出会い、その魅力に引かれたことで靴道に開眼。やがて地元で名の知られた靴店に足しげく通い、店主から靴作りについての話を聞くに及び、生来の工作好きが大いに刺激されたのでした。夏休みに東京の浅草界隈に赴き、靴工場に押しかけては靴作りの現場を見学させてもらったというのですから、その熱心さには驚かされます。
 
卒業後、東京の靴学校に入学すると、主宰者である靴職人が靴をモチーフにしたアート作品に取り組んでいるのを目の当たりにし、それに深く共感。「靴を飾りたい」という欲求が高まっていったのだそうです。そして手製靴メーカーなどで腕を上げていくにつれ、「僕らしい靴作りとは?」と悩むことに。
 
そこで一念発起。ウィーンに渡り、美術館やアーティストの工房を訪れるなどし、“工芸としての靴作り”に不可欠な芸術的感性に磨きをかけていったのです。と同時に、現地の名門手製靴メーカーで約半年間の研修を受け、また、某ファッションブランドから依頼され、サンプルシューズの製作に取り組み、その後、帰国。2011年に自らが主宰するビスポークシューズの工房「ミサワ&ワークショップ」を立ち上げたのでした。

ミサワ&ワークショップ京成本線・都電・営団地下鉄のターミナルである町屋駅からほど近い、住宅街にある工房。オーダーサロンを兼ねているため、室内は整然としており、落ち着いた雰囲気が好もしい。

 

ミサワ&ワークショップ

左/底材に使う革の「にべ」と呼ばれる部位を薄く剥き、それを靴や板に貼り付けた最新作。2015年、日本革工芸展文部科学大臣賞受賞。中/金彩革の技法×浮き彫り染めの技法で作られたサンダル。右/アンティーク家具をモチーフにした作品。
 

ミサワ&ワークショップ

三澤さんの卓越した技術と美に対する研ぎ澄まされた感性が生み出したビスポークは、実用靴ではあるものの、それを超克し、アートを思わせる美しさを身にまとっている。

古典的なウエルトレスウエスト×
ウッドネイルの底付け法も駆使!

三澤さんの靴アートは国内外で高い評価を得ており、例えば2010年のドイツ国際靴職人技能コンテストで金メダル、および名誉賞、日本革工芸展では2013年に日本皮革産業連合会会長賞、2015年には文部科学大臣賞を受賞するといった具合。自らを「大変だと思われることもあまり苦にせず、楽しみながらできる」性格だとも語る三澤さんですが、そんな不断の努力が、こうした栄えある結果をもたらしたのでしょう。
 
ある意味でライフワークともいえる靴アートですが、もちろんビスポーク作りにも怠りはなく、しかも、それらにも靴アートに通じる「美の創造」をたゆまず志向し続ける三澤さんの個性が垣間見えます。それは、たとえば採寸と木型製作に対する哲学。
 
「足形どおりに木型を作ると、結局、どこの工房でも同じようなフォルムになってしまうでしょう? ですから、うちでは採寸する箇所は絞って、履き心地を犠牲にしない範囲で自由にフォルムを決めていくんです」(三澤さん)。
 
こうして出来上がるビスポークは、たとえば一見してトラッドであっても、子細に見れば、実は独自の個性が貫かれていることがわかります。ちなみにデザインはもちろんフリーで、選べる素材は仏アノネイや伊イルチアの上級カーフなど、色バリを含め約30種類。レザーソールにはイギリスの名門J&F. Jバーカーのオークバークが使われます。

 

また、製法は基本的にハンドソーンウェルテッドですが、注目すべきは、オーダーによってはウッドネイル(木クギ)使いのウエルトレスウエストが可能だという点です。これは、足前部では通常のハンドソーンウェルテッドで底付けするも、ウエスト(踏まず部分)にはウエルトを付けず、ウッドネイルで底を留めるという製法。今日ではあまり見ることのできない古典的技法ですが、実はウィーン時代に研修を受けたメーカーがこの製法を堅持しており、三澤さんはそこで、この技術をマスターしたのでした。一般的な技術に比して特に耐久性に優れるわけではありませんが、履くうちに、汗などを吸ったウッドネイルが膨張。しかも一端、湿気を吸うと、乾いてもほとんど伸縮しないため、しっかりと底が留まるのだそうです。
 
と、こうした伝統的な技術も駆使しつつ、ときに斬新な発想を取り入れながら、三澤さんならではの美しく個性的な1足ができあがります。ちなみに仮縫いありで、現状、納品はオーダーから約1年後。料金は24万6800円(税抜。初回は木型作成料込みとなる。専用シューツリー込)からと、思いのほかリーズナブルなのも嬉しい点といえるでしょう。
 

ミサワ&ワークショップ
ミサワ&ワークショップ

本底にクギ穴を穿ったのち、そこにウッドネイルを打ち込んでいるところ。このネイルはドイツ製で、サワラ(ヒノキ科の針葉樹。水気や湿度に耐性をもつ)から作られている。
 

ミサワ&ワークショップ

製作された木型はディスプレーを兼ね、工房にて大切に保管され、次のオーダーを待つ。その右には、三澤さんが尊敬するウィーンの靴職人とのツーショットが飾られている。

 

ミサワ&ワークショップ
ミサワ&ワークショップ

 
 
ミサワ&ワークショップ
〒116-0002 東京都荒川区荒川5-46-3
TEL.03-6807-8839 www.misawa-and-workshop.com

文:山田 純貴 写真:是枝 右恭


 

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