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ヴィンテージ対談|シェルマン代表 磯貝さん×サルト代表 檀さん

シェルマン代表 磯貝 吉秀さん
素晴らしい時計を手にする愉しみを、次世代へ受け継いでもらいたい。

今回スタートする新連載は、使い続けてさらに魅力を増すアンティーク、ヴィンテージ・アイテムの素晴らしさを、長年にわたり普及、啓蒙してきた方々を紹介します。お話を伺うのは『ヨーロッパのように、良いものを大切に使い続ける文化を日本に』との思いから、服のリフォームショップ「サルト」を設立した代表の檀さんです。

第1回はパテック・フィリップを中心とする、時代を超えた名品を紹介してきたアンティークウォッチの名店シェルマン代表の磯貝さん。いち早くアンティークウォッチに保証期間を付け、日本にアンティークウォッチを普及してきた先駆者です。

 

 まず新品の時計ではなく、取り扱いや仕入れも難しいアンティークウォッチのお店を始めた経緯を教えてください。

 

磯貝 うちは男ばかりの3人兄弟で、2人の兄が始めたのが西洋骨董でした。一番上の兄がパンナムに勤めていた関係で海外に安く渡航することができたこともきっかけとなりました。当時の西洋骨董はガレやドームなどのアール・ヌーボーに代表される美術品を指していたのですが、兄たちは、もっと日常的な欧米の品々に関心を持ち紹介したいと思ったようでした。

 

 最初は時計だけではなかったのですね。

 

磯貝 はい、最初はまだ海外旅行が夢の時代でしたから、面白いと思ったものは何でも集めていました。まさにびっくり箱でした(笑)。ブリキのおもちゃやジュークボックス、万年筆などいろいろ取り扱っていました。
ジュークボックスにしてもデザインのカッコよさだけではないんですよ。ドーナツ盤のレコードを真空管アンプで再生して聴くわけですから、まさに当時の音。そういった当時の異文化の面白さをお客さんに伝えたかったですね。↗

 

サルト×シェルマン

 

 当時はまだ古い時計に価値を見い出す人は少なかったと思いますが、アンティークウォッチを扱う上で一番苦労されたことは何でしょうか。

 

磯貝 オブジェとしてただ美しいというものではなく、あくまでも実用品としての腕時計を提供したかったので、やはりアフターケアのメンテナスでしょうか。作られてから50年以上経っているものもあり、人の手が加えられているものも多い。意外とよい状態の腕時計を見つけるのは難しいんです。
もっとも苦労したのは、整備ができる職人の確保と部品の確保でした。ただ1970年代当時はクォーツ全盛期で廃業されるショップや職人も多く、部品や工具などを譲ってもらったりもしました。それが保証付きという発想を可能にしました。当初は兄たちが仕入れていましたが、腕時計に関しては次第に私が仕入れを行うようになりました。↘

 

サルト×シェルマン

 

 シェルマンさんが業界で初めてアンティークウォッチに保証期間をつけたそうですが、そのきっかけを教えてください。

 

磯貝 しっかりしたものは、たとえ数十年経過していても精度も良くて実用品として使えますよ。といくら口先で言ったところでお客さんとしては心配ですよね。腕時計を取り扱い始めた当初から1年間保証をつけるようにしました。ただし、磁気には気をつけるようにお願いしたり、取り扱い上の注意は十分説明していました。
そして、保証をつける以上はアフターケアのことを考えて、いろいろなムーブを集めたり、部品、そして部品を作る為の素材の確保に力を入れました。
日本人は、たとえ古いものでもコンディションのよいものしか買おうとしない。もっとも私も同じ気持ちですが(笑)。

 

 洋服もそうですが、使い捨てではなく、良いものを長く大切に使い続けてほしいですよね。アンティークウォッチが浸透したなと実感されるのはどんなときですか。

 

磯貝 1971年創業ですから以後経済は右肩上がりでした。ちょうど雑誌の黎明期で、クリスマス特集などでアンティークウォッチが多く掲載されるようになったり、少しずつ認知度も高まっていきました。気に入ったものを何十年もワクワクしながら使い続けるのが一番だという想いを込めて、理解してくれる方に販売してきました。
たとえば現行品のパテック・フィリップを愛用されている方が、アンティークのモデルの文字盤を見られ、その丁寧な仕上げや質感、バランスの良さを確認され、購入して下さったときは嬉しかったですね。
日本人はとくに目の肥えたお客さんが多くいらっしゃいます。作られた当時の雰囲気を壊さないためにも、あえてケースの研磨はしていません。ケースを削って角(エッジ)を出すと全体の形のバランスが崩れてしまいます。数十年経った自然さというか、当時の雰囲気を残して伝えていきたいです。いいものを長く使うという気持ちが一番大切なのだと、あらためて思います。↗

サルト×シェルマン

写真左がサルト代表の檀さん。右がシェルマン代表の磯貝さん。

 

 表参道のハナエモリビルの地下にあったアンティークマーケットが最初の店舗ですか。

 

磯貝 いいえ本店は1971年創業で銀座の歌舞伎座奥に店を構えました。その後渋谷の西武にキュリオという、アンティークを中心とした画期的なコーナーができ、そこにも出店しました。そして昭和53年、ハナエモリビルの地下にアンティークマーケットができキュリオからそちらに移転したわけです。
当初より、異文化の面白さと同時に、最高の職人がお金持ちのために作った道具を、われわれ庶民が使うことができたらどんなに楽しいだろう。そんな気持ちでやっていました。本店の方では蓄音機、オルゴール、ビスクドールなどを展開し、ハナエモリビルの地下では、機械式の時計だけでなく、万年筆、ブリキのおもちゃ、ノベルティーものなども扱っておりました。万年筆は1930年代以降に作られたものが構造もしっかりしていて精密な作りでしたね。たとえばシェーファーのライフタイムはすごく頑丈であるにもかかわらず滑らかな書き味。反対に英国製のオノトは毛筆のように柔らかいんです。日々の生活で実際に使うことのできるものを多く扱っていました。
腕時計にしても、ファッションとして、ただ動けばいいというものではなくて、グレードの高いブランドの、状態の良いものを選び、きちんと整備して新品同様に使えるようにしていました。腕時計は時を超えて生活に欠かせない道具でもあり、もっとも精緻な骨董品だったと思います。最初はアメリカ製の角金時計、次にロレックス、そしてパテック・フィリップなども取り揃えその魅力を発信するようになりました。←

 

サルト×シェルマン

 

 仕入れ先はヨーロッパとアメリカどちらですか。

 

磯貝 圧倒的にアメリカです。機械式腕時計の全盛期でもある1950年代はちょうどアメリカの経済もよく、スイス時計の多くはアメリカ市場に向けて製作、販売されていたんです。アメリカに腕時計が集まっていた時代でした。ただ、残念ながら1970年代になり、クォーツが普及してくると機械式時計に対する評価は急激に下り、整備にお金をかけなくなり保存状態も悪化してゆきました。多くの素晴らしい時計たちが下手な触られ方をして壊されていたりしてしまいました。その為、仕入れに際してはかなり注意深いコンディションの見極めが必要となりました。
見ただけではわかりにくいんです。部品が不適切なものに交換されていたり、カレンダーの歯車の一部が欠けていたり…。残念で仕方ありません。
あと、品質管理が一番大変でしたね。古いから駄目で当たり前という認識ではなく、古くても整備すれば実用品として十分に使えるということを証明したかったです。←

 

サルト×シェルマン

 

 さすが、半世紀近くアンティークウォッチの普及をされてきただけあって、お話に聞き入ってしまいました。きっと、ご苦労も多いでしょうが、磯貝さんを見ていると、本当にこの仕事がお好きなのだと思いました。
ヨーロッパでは、上等な服を修理や仕立て直しをしながら大切に着続け、親から子へと受け継ぐのは自然で尊い行為とされています。私は日本にもこうした価値観を普及させたいとサルトを始めました。シェルマンさんに追い付けるよう、今後もスタッフ一同頑張りたいと思います。
本日はありがとうございました。

 

取材協力:シェルマン銀座店
東京都中央区銀座5-9-12 ダイヤモンドビル1F
TEL.03-5568-1234
www.shellman.co.jp

文:倉野 路凡 写真:猪又 直之

2015.02.09 UPDATE

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