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リペアの範疇にとどまらないボールワークス

2013年4月6日

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シューズリペアショップは数あれど、東京・銀座の「ボールワークス」ほどユニークな存在はありません。同店にはアッパーを染め替える「リファクト」なるメニューがあるからです。しかも、代表の丸谷誠さんによれば、その第一の目的は「革のコンディションを高めること」にあるのだとか。つまりリペアの発展形がリファクトだということ。そして、これは同メニューの名にとどまらない、同店のコンセプトそのものでもあるのです。
服のリフォームショップ「サルト銀座店」に併設する約2坪のスペースに、丸谷誠さんが「ボールワークス」を開設したのは2010年の12月。服と靴の両分野をリンクさせることで、顧客の要望に幅広く応えることを目的にした試みでした。
そのボールワークスでは一般的なリペアももちろん受け付けています。しかし、なかでも同店のコンセプト「リファクト」がそのままメニュー名にもなっている、アッパーの染め替えに注目したいのです。

リファクトとは塗り替えではなく、
染め替えること

では、その「リファクト」とはどのような色変えなのか?
色変えは、いくつかのシューズリペアショップでも受け付けています。あるいは、自身でそれを行っている靴好きもいるでしょう。そして、それらは基本的にもととは異なる色のクリームを塗布することで達成されます。
ところがボールワークスのリファクトは、それらとは根本的に違うのです。簡単に言ってしまえば、塗り替えたり塗り重ねるのではなく、染め替えるのです。ということは、必然的に脱色の作業を要するのですが、驚くべきは、それと再染色が同時に行われるという点です。丸谷さん曰く「もとの色とは違う色の染料を希釈させた脱色用溶剤を使い、時間をかけて色を変えていきます。しかも最終的な仕上がりの色を想定し、逆算して希釈するのです」とのこと。当然、調合のあんばいはボールワークスの企業秘密であり、リファクトの本懐たるノウハウでもあるわけです。
ちなみに、一般に脱色は革のコンディションを劣化させますが、丸谷さんが開発した方法ではその懸念は無用。また、再染色では基本的にクリームや顔料は用いず、染料を革の繊維に芯通しさせていきます。結果、革の繊維内までが一新され、シミなどがきれいに除去されるわけです。

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独自開発の技術により、ブラウンからブラックに染め替えられた靴。美しい光沢も戻り、よりシャープな印象になった。このメニューの所要期間は、通常1週間~2週間。カーフは1万5750円~。

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表革の染め変え技術を応用し、スエードやヌバックなどの起毛革の色変えも行う。所要期間は、通常1週間~2週間。1万8900円~。ちなみに、起毛革をバケッタ風の表革に加工することも可能だ。

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トレンドを踏まえた美意識と高度な技術を背景にしたリフォームのプロ集団として洒落者に高い評価を得ているサルト。リフォームから大胆なカスタマイズやリメイクにとどまらず、凄腕の仕立て職人を抱えオーダーメイドにまで領域を拡大。ボールワークスが靴を担当することで、洋服から靴までここですべて網羅する。サルト(SARTO) 東京都中央区銀座2-6-16 第二吉田ビル2F・3F TEL.03-3567-0016 営業時間/11:00~19:30(日・祝は11:00~19:00)水曜定休

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商業ビル3階にある「サルト銀座店」の一角に構えるショップ兼アトリエ。一般的なシューズリペアはもちろん、アッパー染め替えなどのオリジナルメニューも多彩だ。ボールワークス(Ball Works) 東京都中央区銀座2-6-16 第二吉田ビル3F サルト銀座店内 TEL.03-5579-9470 営業時間/11:00~19:30(日・祝は11:00~19:00)火曜、水曜定休

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ボールワークス 代表取締役 丸谷 誠さん 1978年、富山県小矢部市生まれ。イタリアの高級靴ブランド日本法人で販売・修理を担当する。2010年に独立し、ボールワークス設立。アッパー染め替えなど独自技術の構築に努め、老舗ブラシ屋の江戸屋と協業で開発したオリジナル商品も展開する。

「薄→濃」はもちろん、「濃→薄」の色変えも!

いわば「カラーのビスポーク」ともいうべきボールワークスの染め替えレシピ「リファクト」。当然、薄い色を濃い色にすることは容易ですが、じつはその逆を受け付けることもあります。たとえばブラックをネイビー、あるいはグレーに、は可能。ですが、それをブラウン系にするのは難しい。つまり「濃→薄」はある程度、色が限定されるわけですが、それでもクリームを使わず色変えができるのはボールワークスだけなのです。
「リペアは戻すことですが、リファクトは雰囲気を変えること」と語る丸谷さん。この哲学は同店の他のメニューにも通底していますが、アッパーの染め替えはそれを最も顕著に象徴したものといえましょう。ちなみに、同店のお客さんは単なるリペアに飽き足らず、リファクトを希望するカスタム志向が多いのだとか。納得ですね?

その他のリペアメニュー

レギュラークリーニング
「芯材や中底がどのような状態になったかがわからない」との理由から水洗いはせず、独自開発によるケミカルケアを施す。まず、個々の症状に合わせて処方。洗浄用の薬剤の刺激に耐えられるよう前処置を行った後に通気性膜から薬剤を入れ、革を傷めることなく繊維の内部から洗浄する。所要期間1週間以内。6300円~。

コードバンの質戻し
革割れの原因になりかねないため、刺激の強いワックスは用いず、木製のヘラを使い、独自調合のオイルを時間をかけ、繰り返し繊維内に押し込んでいく。これにより、この革独特の奥行きある色ツヤがよみがえる。所要期間1週間以内。7350円~。ちなみにコードバンの染め替えも可能で、こちらは所要時間1週間~2週間。1万8900円~。

ソフトコンディショニング(革の柔軟化)
小指の付け根が当たって痛むといった場合、ストレッチャーに靴をセットしてボールガース(足指付け根部のわたり幅)の革を伸ばすのが一般的だが、「靴の形が歪む」「革が傷む」「革が十分伸びない」「すぐにもとの状態に戻る」といった結果になることも。そこでボールワークスではストレッチャーは使わず、独自開発の薬品を用いて革の伸縮性を高めることで、小指への当たりを緩和。革割れなどは起きず、靴の形崩れもない。この技術を応用し、甲部分の履きジワを小さくすることも可能。所要期間1週間~2週間。7350円~。

※ボールワークスには、以上の他にも多彩なメニューが提供されている。

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